アジア太平洋地域をリードするフレキシブルワークスペースプロバイダーJustCoが、バンコクの中心部に誕生した巨大複合開発プロジェクト「One Bangkok」内に、初のラグジュアリーコワーキングスペース「THE COLLECTIVE One Bangkok」を開設した。このローンチは単なる新規事業の開始を超え、タイの商業用不動産市場における重大な転換点を示している。
バンコクオフィス市場の変化と課題
バンコクのオフィス市場は現在、深刻な供給過剰に直面している。2025年初頭の総面積は630万平方メートルを超え、空室率は1997年の金融危機以来最高となる27%に達した。平均賃料の下落も予測され、家主が最大30%の前例のない割引を提供する激しい「テナント市場」が形成されている。
しかし市場の二極化が鮮明になっている。新築で環境認証を取得したプライムグレードのビルは増加を維持する一方、旧式のビルからはテナントが流出している。この「Flight to Quality(質の高い物件への逃避)」トレンドが、THE COLLECTIVEの主要な推進力となっている。
JustCoの他のバンコク拠点は供給過剰の状況下でも90%という健全な稼働率を維持しており、プレミアム市場への需要の強さを裏付けている。
JustCoの戦略的進化
JustCoは単一ブランドから進化し、現在では3つの階層からなるポートフォリオを運営している。ラグジュアリー層向けの「THE COLLECTIVE」、プレミアム層向けの「JustCo」、必要最低限の機能を提供する「the boring office」だ。
このブランドセグメンテーションは、コストを重視するスタートアップから威信を求める多国籍企業まで、異なる市場セグメントと価格帯を網羅するための戦略である。バンコクのTHE COLLECTIVEは東京、台北に次ぐ3番目の拠点として、アジア太平洋地域における計画的な展開戦略の一環となっている。
THE COLLECTIVE One Bangkokの特徴
施設はルンピニ地区パトゥムワンの一等地、ラマ4世通りとワイヤレス通りの角に位置するOne Bangkokのタワー4の28階に展開されている。2,670平方メートルの広さを占め、市街の360度のパノラマビューとMRTルンピニ駅への直接アクセスが特徴だ。
投資額は約1億3,300万バーツに上る。特筆すべきは、オープンからわずか2ヶ月で稼働率が50~60%以上に達したことで、このニッチな市場セグメントにおける強い需要を明確に示している。
価格設定は明確にプレミアム市場をターゲットにしている。ホットデスクは月額9,500バーツから、プライベートオフィスは1人あたり月額約20,000バーツからとなっている。100平方メートルのオフィスは月額150,000バーツで提供されており、停滞する一般市場と比較してその高級な価格設定が確認できる。
体験型サービスの革新
この施設の最大の焦点は、単なる労働環境の提供ではなく、高度に洗練された「ホテル化された」体験の創出にある。Herman Miller社のAeronチェア、昇降式デスク、毎日のグルメな朝食、Sarnies Bangkokのバリスタコーヒー、TWG Tea Bar、クラフトカクテルが楽しめる毎日のアペリティフアワー、AESOPのアロマセラピー製品などが提供される。
これは単にワークスペースを提供するだけでなく、一つのライフスタイルを厳選・編集する試みである。会員はJustCoが世界に展開する40以上の拠点へのアクセス権も得られるため、多国籍企業にとって大きな付加価値となっている。
One Bangkokとの共生関係
このプロジェクトを成功に導いた決定的要因の一つは、One Bangkokの開発者であるFrasers PropertyがJustCoの主要株主(約25%を保有)であることだ。この関係は両社にとって強力なシナジーを生み出している。
One Bangkokは39億米ドル(約1.2兆バーツ)を投じた「完全に統合された地区」として、プレミアムオフィス、高級住宅、ホテル、商業施設、文化施設を融合させている。1日あたり20万人の来訪者と6万人の就労・居住人口を見込む一大経済ハブとして設計されている。
国家政策との連携
THE COLLECTIVEの開業は、タイ政府が推進する「タイランド4.0」政策とも密接に連携している。この政策は国を価値ベースのイノベーション主導型経済へと転換させることを目指す国家戦略であり、ハイテク産業に焦点を当てている。
タイ政府のデジタルノマドビザ政策(DTV/LTR)は、単なる観光促進策ではない。それはTHE COLLECTIVEのようなプレミアムなフレキシブルワークスペースのターゲット市場を直接創出する産業戦略である。DTVビザの申請が初年度で35,000件を超えたことは、高品質な労働場所を必要とする潜在顧客層がすでに存在することを示している。
今後の展望
THE COLLECTIVEの成功は、バンコクにおいて、より「ホテル化」され、体験を重視したワークスペースの増加を促す可能性が高い。今後の成功の鍵は、単に物理的な空間を提供するだけでなく、活気あるコミュニティとエコシステムを創造し、管理する能力にあるだろう。
バンコクの都市計画当局は、この「質の高い物件への逃避」がもたらす結果として、老朽化し空室となったオフィスビルの活用法や、巨大プロジェクトが地域コミュニティに与えるジェントリフィケーションの影響をいかに緩和するかという課題に直面する。
BKK IT Newsの見解では、One Bangkok、そしてその一部であるTHE COLLECTIVEは、タイにおける品質、持続可能性、統合開発の新たな基準を打ち立てたと考えられる。これは市場を前進させる一方で、参入障壁を高め、このような野心的なプロジェクトを遂行できる資本力とコネクションを持つ少数の大手デベロッパーへの不動産市場の集約を加速させる可能性がある。
企業への示唆
タイの企業は、従業員のウェルネスとブランドイメージの向上を重視するハイブリッドワークモデルへの対応を迫られている。THE COLLECTIVEのような高級ワークスペースの活用は、優秀な人材を惹きつけ維持するための戦略的ツールとして検討する価値がある。
特に多国籍企業にとって、一等地という住所と最高級のアメニティは、企業の威信を高める重要な要素となる。ただし、プレミアム価格設定との費用対効果を慎重に検討する必要がある。
従来の長期賃貸契約からフレキシブルなワークスペースソリューションへの移行は、市場の不確実性に対応するための選択肢の一つとして位置づけることができる。
参考記事リンク
- “THE COLLECTIVE One Bangkok” Debuts in Thailand Flagship Luxury Space in the Heart of Bangkok Redefines Coworking – JustCo
- JustCo sets out ambitious growth plan – Bangkok Post
- THE COLLECTIVE One Bangkok Office for Rent in Lumpini – CBRE Thailand
- About Us | One Bangkok
- Office oversupply crisis: Transitioning to the ‘green building’ era – Nation Thailand