タイ3社ユニコーンIPO計画が始動 ~Bitkub・Flash Express・Line Man Wongnaiが同時期上場へ

タイ3社ユニコーンIPO始動~Bitkub・Flash・LINE Wongnaiが上場準備 タイ政治・経済
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2025年8月22日、タイのユニコーン企業3社が相次いでIPO計画を発表した。Bitkub Capital Group、Flash Express、Line Man Wongnaiの創業者が同じステージに立ち、各社の上場スケジュールを明らかにした。この同時発表は、タイのスタートアップエコシステムが新たな発展段階に入ったことを示している。

各社のIPO計画概要

Bitkub:規制当局からの信頼回復が狙い

タイ最大の暗号資産取引所Bitkubは2025年第4四半期から2026年第1四半期のIPO実施を目標としている。同社は2021年にサイアム商業銀行との取引破談を経験した。この破談は規制当局との「未解決の問題」が原因とされている。

CEO ジラユット・スルプシソーパー氏はIPOの目的を「金融機関としての認知」と明言している。同社は現在、1000億バーツの顧客資産を預かる。IPOによる厳格な審査プロセスを経ることで、過去の規制問題がすべて解決されたことを証明したい考えだ。

同社は過去5年間継続して利益を計上している。2023年7月には取引所部門の評価額が約60億バーツとなった。CEO は IPO時の評価額が最大30億ドルに達する可能性を示唆している。

Flash Express:物流戦争の軍資金調達

2017年創業の配送大手Flash Expressは「次のステップ」としてIPOを位置づけている。同社は2021年にタイ初のユニコーン企業となった。

同社は中国モデルを導入し、無料集荷と365日サービスでタイの物流市場を変革した。Kerry ExpressやJ&T Expressとの激しい競争により、業界全体の配送料金が大幅に下落した。

2023年1月に4億4700万ドルのシリーズF資金調達を実施し、評価額は21億ドルに達した。2024年には9億4000万バーツの利益を計上したと報じられている。IPOによる資金は自動化、技術、地域展開に充てられる予定だ。

Line Man Wongnai:スーパーアプリの統合完成へ

2020年に誕生したLine Man Wongnaiは「今後5年以内」のIPO実施を表明している。他の報道では2026年の上場が示唆されている。

同社はLINEのオンデマンドサービス「LINE MAN」とレストランレビュープラットフォーム「Wongnai」の合併で誕生した。現在は食品配達、配車、決済など包括的なサービスを提供するスーパーアプリとして発展している。

2022年9月にシンガポール政府投資公社とLINEが主導した2億6500万ドルの資金調達で評価額が10億ドルを超えた。同社は2025年の黒字化を見込んでいる。

同時発表の戦略的意味

3社が同じタイミングで発表した背景には、タイ証券取引所の活性化への貢献という共通目標がある。SET は近年、大規模テクノロジー企業の上場不足に直面している。これらのユニコーン企業の上場は、取引所の近代化と新たな投資家層の開拓に重要な役割を果たすと期待されている。

一方で、3社は同じ投資家資本を巡って競争することにもなる。最初に上場する企業のパフォーマンスが、後続企業の市場評価に影響を与える可能性が高い。

タイ経済への影響

これらのIPOは単なる資本調達を超えた意味を持つ。タイのデジタル経済が成熟期に入ったことを示すシグナルとして機能する。政府が推進するタイランド4.0政策の成果を証明する象徴的な出来事でもある。

成功すれば、次世代のスタートアップにとって重要な先例となる。創業者や初期従業員への富の効果により、新たなイノベーションと投資の好循環が生まれる可能性がある。

課題と今後の展望

各社は上場に向けて異なる課題に直面している。Bitkubは規制当局との信頼関係の再構築が最優先課題だ。Flash Expressは激しい競争環境での収益性維持が求められる。Line Man Wongnaiはギグワーカーとの関係を巡る社会的責任への対応が注目される。

これらの企業の上場プロセスと上場後のパフォーマンスは、タイ経済のデジタル化の成功度を測る重要な指標となる。BKK IT Newsとしては、各社のIPO実現とタイ証券取引所の活性化に期待している。

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