タイ入国カードがデジタル化 ~日本人ビジネスマンが知るべきTDAC対応策~

タイ入国カードがデジタル化 ~日本人ビジネスマンが知るべきTDAC対応策~ タイノマド
タイノマドデジタルガバナンス

タイへの入国手続きが大きく変わりました。2025年5月1日から、従来の紙の出入国カード(TM6)に代わって、タイデジタル到着カード(TDAC)の事前オンライン登録が義務化されています。この変更は、タイでビジネスを展開する日系企業の出張管理に直接影響します。一方で、当初予定されていた電子渡航認証(ETA)は、システムの安定稼働を優先して延期されました。

従来システムからの変遷

タイの入国カード制度は頻繁に変更されてきました。2022年7月には空路入国時のTM6記入が一時的に免除されました。これは新型コロナウイルス後の入国手続き円滑化の一環でした。その後、2024年4月から10月まで陸海路でも記入不要となっていました。そして今回、完全にデジタル化されたTDACへと移行したのです。

この変更は世界的なデジタル化の流れに沿ったものです。各国が効率的で安全な国境管理を目指す中、タイも国際競争力維持のためにこの動きに追随しています。

タイ政府の戦略と狙い

TDACの導入は、タイ政府の「スマート・イミグレーション」構想の一部です。主な目的は入国手続きの効率化とペーパーレス化による利便性向上です。QRコード提示だけで済むため、手続きの簡略化と待ち時間の短縮が期待されています。

国境管理の強化も重要な目的です。健康申告欄には過去14日間の訪問国や症状に関する項目が含まれており、パンデミック後の教訓を活かした公衆衛生リスク管理に役立ちます。

デジタル記録により、タイは観光サービスのカスタマイズと時間経過に伴う体験向上のためのデータ洞察を得られます。これにより観光客のニーズに合わせた政策立案が可能となります。

新しいDestination Thailand Visa(DTV)との連携も注目されます。DTVは5年間有効で、1回の入国につき最長180日間滞在可能です。デジタルノマドやリモートワーカーを対象としており、TDACとの組み合わせで長期滞在者の誘致を図っています。

デジタル化の効果と課題

TDACの導入は観光産業にポジティブな影響をもたらします。スワンナプーム、ドンムアン、プーケットなど主要空港での待ち時間短縮が予測されています。記入ミスや紙の紛失リスクがゼロになることで、入国審査がスピーディーになります。

環境負荷の低減も重要な効果です。紙製TM6の廃止は環境に優しい観光のトレンドに合致し、持続可能な観光地としてのタイのイメージ強化に寄与します。

しかし課題も存在します。高齢者やテクノロジーに不慣れな旅行者にとって、オンライン登録は新たな障壁となります。詐欺サイトの出現も懸念材料です。TDACは完全無料ですが、登録代行を名乗る業者による金銭要求が報告されています。

タイの観光業は構造的な問題にも直面しています。大麻規制の再強化、二重価格問題、高額な旅行費用など、デジタル化だけでは解決できない課題があります。

日本人出張者への影響と対応策

日系企業の出張管理担当者は、以下の重要な変更を理解する必要があります。

2025年5月1日以降、すべての非タイ国籍者は空路・陸路・海路を問わずTDACの事前登録が必須です。大人も子供も含めて全員が個別申請する必要があります。事前登録がないと入国審査時にその場で登録を求められ、混雑やトラブルの原因となります。

パスポートの残存期間は6ヶ月以上が必要です。日本国籍の場合、観光目的の60日以内滞在であればビザは不要ですが、それ以上の滞在や観光目的以外では事前ビザ取得が必要です。2025年1月1日からタイのビザ申請はすべてオンラインe-Visaプラットフォーム経由となっています。

TDAC登録の実際の手順

TDACはタイ到着日の3日前から当日まで登録可能です。技術的には当日登録も可能ですが、出張者の混乱を避けるため、到着72時間前までの登録を強く推奨します。

登録は公式ウェブサイト(tdac.immigration.go.th)または公式アプリ「SAWASDEE by AOT」から行います。必要な情報は、パスポート情報、個人情報、旅行情報、タイでの宿泊情報、健康申告情報です。入力は英語のみです。

グループ申請では最大10人まで一括登録できます。企業の出張管理担当者にとって、この機能は複数名の出張時に有効活用できます。

申請後、登録メールアドレスに確認メール(電子版入国カード)が届きます。QRコードや登録番号が記載されており、これをタイ到着時の入国審査で提示します。

出張管理での注意事項

出張者への事前案内では、以下の点を必ず伝える必要があります。

加熱式たばこや電子たばこの持ち込みは禁止されており、最高10年の懲役または50万バーツの罰金が科せられます。麻薬、銃器、わいせつ物、偽造品なども持ち込み禁止です。

大麻に関しては2025年6月24日から規制が強化されました。娯楽目的での販売は禁止され、購入には医師の処方箋が必要です。公共の場所での喫煙も違法となっています。

外国人に対する二重価格が存在する場所があることも認識しておくべきです。特に国立公園などで顕著であり、出張者への事前説明が必要です。

今後の展望

TDACの導入は、タイ入国手続きの近代化における重要な一歩です。BKK IT Newsとしては、この変更が日系企業の出張業務に与える影響は限定的である一方、事前準備の重要性が増していると分析します。

ETAの延期により、当面は現在のビザ制度が継続されます。しかし将来的にはより包括的なデジタル入国システムが構築される可能性があります。日系企業は定期的な情報収集と社内ガイドラインの更新が必要です。

デジタル化は旅行者の利便性向上に寄与しますが、事前準備と正確な情報収集の重要性も増しています。公式情報源の確認と詐欺サイトへの注意喚起を継続的に行うことが、スムーズな出張業務の実現に不可欠です。

参考記事リンク