プレミアティア2社を筆頭に専門性で差別化、企業DXの成否はパートナー選びが鍵
タイのAWSパートナーエコシステムが成熟段階を迎えている。2025年初頭のAWSバンコクリージョン開設により、タイ企業のクラウド導入が本格化する中、AWSパートナーネットワーク(APN)に属する主要企業7社がそれぞれの専門性で差別化を図っている。プレミアティアのClassmethodとNTT DATAを筆頭に、各社が独自の強みで市場をリードする構図が明確になった。
タイランド4.0とAWS参入の背景
タイ政府が2016年に発表した「タイランド4.0」戦略が、現在のクラウド市場成長の礎となっている。同戦略はイノベーション、テクノロジー、創造性を基盤とする価値ベース経済への移行を目指すものだった。
決定的な転換点となったのは2025年初頭の二つの出来事だ。タイ政府の「クラウドファースト」政策の本格導入と、AWSバンコクリージョンの正式ローンチである。これにより、データ主権の確保と低遅延サービスが実現し、政府機関から民間企業まで幅広いクラウド導入が加速した。
AWSは2037年までに50億米ドルを投資し、タイのGDPに約100億米ドルの経済効果をもたらすと試算されている。AWSタイリージョン開設から6ヶ月の市場分析で詳述されているように、この大規模投資によりAWSパートナーエコシステムの重要性が一層高まっている。特に中小企業のクラウドファースト戦略では、SME市場での急速な普及が確認されている。
主要7社の専門性マップ
タイのAWSパートナー市場では、プレミアティア2社とアドバンストティア5社が主要プレイヤーとして活動している。各社の特徴は以下の通りだ。
プレミアティア企業の圧倒的な専門性
Classmethodは日本発のプレミアティアパートナーとして、AWS Partner of The Year – Global を取ったこともある実力企業だ。同社の強みは深い技術的専門性とコスト最適化サービスにある。高度な技術サポートを求める企業の第一選択肢となっている。
NTT DATAはグローバルなシステムインテグレーターとして、全世界で16のコンピテンシーと10,000人以上の認定エンジニアを擁する。大規模で複雑なエンタープライズシステムの変革、マネージドサービス、マルチクラウド環境の構築に強みを持つ。多国籍企業や大手金融機関にとって主要な選択肢だ。
アドバンストティア企業の多様な強み
True IDCはタイ国内のクラウドおよびデータセンタープロバイダーの草分け的存在として、AWS Direct Connectのデリバリーパートナーに認定されている。自社の国内データセンターとネットワークインフラを組み合わせたハイブリッドクラウドソリューションが最大の特徴だ。
G-Ableは35年以上にわたるタイのITサービス市場での経験を武器に、移行コンピテンシーやデジタル顧客体験コンピテンシーを保有している。カセサート大学の学籍登録システムなど、高トランザクション処理が求められる案件での実績が同社の技術力を証明している。
Metro Systemsは特にデジタルワークプレイスコンピテンシーを保有し、Amazon WorkSpacesなどのエンドユーザーコンピューティング(EUC)ソリューションに強みを持つ。コンサルティングから移行、マネージドサービスまで幅広く提供している。
Dailitechはタイ発のテクノロジー企業として、データソリューションとAI分野に特化している。データレイクやAI/MLの活用、アプリケーション移行に関する専門知識を持ち、データを活用したイノベーション創出を目指す企業の重要なパートナーだ。
SiS Distributionはタイで最初のAWS認定ディストリビューターとして、直接的なソリューション提供よりも広範なリセラーネットワークを構築・支援している。特に中小企業(SMB)市場へのAWSサービス普及を促進するビジネスモデルが特徴的だ。
市場の成熟と企業の戦略転換
タイのAWSパートナー市場の成熟は、企業のパートナー選定基準の変化を示している。かつては「AWSを再販できる会社」を選ぶだけで十分だったが、現在は「自社のビジネスモデルや戦略的目標に合致したパートナー」を選ぶことが重要になっている。
グローバル展開を目指すならNTT DATA、国内のハイブリッド環境を重視するならTrue IDC、技術的な内製化支援を求めるならClassmethodといったように、パートナーの選択そのものが企業のクラウド戦略を方向づける重要な意思決定となっている。
今後の市場展望
BKK IT Newsは、タイのAWSパートナー市場がさらなる専門化と高度化の方向に向かうと予測している。AI需要の急増やマルチクラウド環境への対応など、より複雑な技術要件が求められる中、パートナーの専門性がますます重要になる。
また、政府の「クラウドファースト」政策の浸透により、公共セクター向けの専門性を持つパートナーの価値が高まる可能性が高い。
企業のパートナー選定指針
タイでクラウド導入を検討する企業は、以下の要素を総合的に評価してパートナーを選定すべきだ。
自社の事業規模と業界特性を明確にした上で、技術的要件と企業文化に合致するパートナーを選択することが成功の鍵となる。プレミアティアやアドバンストティアといったティア分類に加え、各社が保有するコンピテンシーと実績を詳細に比較検討することが重要だ。
マルチクラウド戦略を検討する企業もあるが、マルチクラウドのリスク分析で指摘されているように、人材コストの増大や運用の複雑化といった課題も存在する。単一プロバイダーのエコシステム内での最適化を重視する企業が増えている中、継続的な人材育成とリスキリングに対応できるトレーニング体制が重要な選定基準となる。
パートナー選定は技術プロジェクトであると同時に、組織変革プロジェクトでもある。最新のインフラを導入しても、それを使いこなせる人材と適切なパートナーシップがなければ真の価値は生まれない。
参考記事リンク
- AWS launches first cloud infrastructure region in Thailand – About Amazon Singapore
- AWS Partner ในไทย: วิเคราะห์เจาะลึก 4 พาร์ทเนอร์ชั้นนำสำหรับธุรกิจของคุณ (ฉบับเดือนกุมภาพันธ์ 2025) – asoke.cloud
- AWS Services Partner Tiers
- Amazon Web Services | NTT DATA
- AWS タイリージョンが利用可能になりました! – Classmethod Thailand