タイ企業に影響~紅海海底ケーブル切断でクラウドサービス遅延

紅海ケーブル切断がタイに波及~Azure遅延で企業活動に支障 クラウド
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2025年9月6日から7日にかけて、紅海で複数の海底ケーブルが切断される事案が発生しました。この障害により、タイを含む中東・南アジア地域でインターネット接続の遅延が発生し、企業活動に影響を与えています。

切断されたケーブルと影響範囲

今回切断されたのは、SMW4(Southeast Asia-Middle East-Western Europe 4)、IMEWE(India-Middle East-Western Europe)、FALCON GCXの3つの主要システムです。これらのケーブルは、ヨーロッパとアジア間のデータ通信を支える重要なインフラです。

障害発生地点はサウジアラビアのジェッダ沖と特定されています。影響を受けた地域は、アラブ首長国連邦(UAE)、インド、パキスタン、クウェートなどです。タイでも間接的な影響でクラウドサービスの遅延が報告されました。

クラウドサービスへの直接的影響

Microsoftが最初にこの問題を公表しました。同社のAzureステータスページでは、「中東を経由していた一部のトラフィックで、より高い遅延が予想される」と警告を出しています。

完全なサービス停止は回避されました。しかし、代替ルートを経由することで遅延時間が増加しています。この状況はケーブル修復まで継続する見込みです。

企業への具体的な影響

遅延の増大は、企業の業務に複数の影響を与えます。

まず、金融取引システムです。高頻度取引やリアルタイム決済で遅延が発生すると、取引機会の損失や決済処理の遅れが生じます。

次に、サプライチェーン管理です。リアルタイムでの在庫追跡や配送状況確認に支障が出ると、物流効率が低下します。

さらに、クラウドベースの業務システムです。ERPや顧客管理システムの応答時間が延びると、業務生産性が低下します。

フーシ派関与の疑い

ケーブル切断の原因は公式には未発表です。しかし、イエメン政府はフーシ派による意図的な攻撃と主張しています。

フーシ派は2024年初頭にも同様のケーブル攻撃への関与を疑われています。今回も、同地域での船舶攻撃キャンペーンとの関連性が指摘されています。

複数のケーブルが同時に切断されたという事実は、偶発的事故よりも協調的な行為を示唆しています。

修復にかかる期間と費用

海底ケーブルの修復は複雑で時間のかかる作業です。専用の修理船を現場に派遣し、損傷部分を特定して引き揚げ、新しいケーブル部分を接続する必要があります。

過去の事例では、修復完了まで数週間から数ヶ月を要することが多いです。今回は紛争地帯での作業となるため、安全確保の問題でさらに時間がかかる可能性があります。

修理費用はケーブル1件あたり100万~300万ドルです。紛争地帯では警備コストなどが追加されるため、費用はさらに増加します。

企業が取るべき対応策

この事案から企業が学ぶべき教訓があります。

第一に、クラウドサービスの分散化です。単一の地域に依存せず、マルチリージョン構成で複数のデータセンターを使用することでリスクを軽減できます。

第二に、業務継続計画の見直しです。通信遅延が発生した場合の代替手順を事前に準備しておくことが重要です。

第三に、SLA(Service Level Agreement)の確認です。クラウドプロバイダーとの契約内容を確認し、障害時の補償内容を把握しておくべきです。

長期的な影響と展望

今回の事案は、グローバルなデジタルインフラの脆弱性を露呈しました。紅海は世界のインターネットトラフィックの17%が通過する重要なチョークポイントです。

地政学的リスクを回避するため、北極海航路など代替ルートの検討が進んでいます。しかし、これらのプロジェクトの完成には数年を要します。

BKK IT Newsとしては、企業は短期的な業務継続策と長期的なリスク分散戦略の両方を準備すべきと考えます。

まとめ

紅海での海底ケーブル切断は、企業のデジタル依存度が高まる中で重要な警鐘です。完全なサービス停止は回避されましたが、遅延による生産性低下は避けられません。

企業は今回の教訓を活かし、リスク分散と業務継続性の強化を図るべきでしょう。クラウドサービスの選択においても、地政学的リスクを考慮した戦略的判断が求められています。

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