Google最新AIモデルが価格競争を加速 ~Gemini 3 Flash発表、タイでのAI導入コストを引き下げ~

Google最新AIモデルが価格競争を加速 ~Gemini 3 Flash発表、タイでのAI導入コストを引き下げ~ AI
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2025年12月17日、GoogleがAIモデル「Gemini 3 Flash」を発表した。上位モデルGemini 3 Proに匹敵する推論能力を持ちながら、API利用コストを数分の一に抑えた。タイでAI導入を検討する企業にとって、新たな選択肢となる。

Gemini 3 Flashの特徴

Gemini 3 Flashは「スピードのために構築された最先端の知能」というコンセプトで開発された。主な特徴は以下の3点だ。

1つ目は、上位モデルGemini 3 Proから継承した推論能力。科学的推論のベンチマーク「GPQA Diamond」で90.4%を記録し、博士号レベルの専門知識を要する問題に対応できる。

2つ目は、圧倒的な応答速度。秒間約220トークンの処理能力を持ち、Claude Sonnet 4.5の約3.6倍の速度を実現した。

3つ目は、低コストでの運用が可能な点。入力100万トークンあたり0.50ドル、出力100万トークンあたり3.00ドルという価格設定だ。Claude Sonnet 4.5と比較すると、入力コストで6分の1、出力コストで5分の1となる。

競合モデルとの性能比較

注目すべきは、難関ベンチマーク「Humanity’s Last Exam(HLE)」での成績だ。Gemini 3 Flashは33.7%を記録し、OpenAIのGPT-5.2(34.5%)に迫る数値を叩き出した。Claude Sonnet 4.5の13.7%を大きく上回る結果となった。

ソフトウェア開発のベンチマーク「SWE-bench Verified」では78.0%を達成。これは上位モデルGemini 3 Pro(76.2%)を超える数値だ。コーディングタスクにおいては、軽量モデルの方が効率的に作業を進められる場合があることを示している。

提供形態と利用方法

発表と同時に、複数のプラットフォームで利用可能となった。Geminiアプリでは無料ユーザーにもデフォルトモデルとして提供される。Google検索の「AIモード」のバックエンドエンジンにも採用された。

開発者向けには、Google AI StudioとVertex AIでAPIが公開されている。「Thinking Level」というパラメータを使い、タスクの複雑さに応じてモデルの思考深度を4段階で調整できる。簡単なタスクではコストを抑え、複雑なタスクでは深く思考させることが可能だ。

また、新たに発表されたエージェント開発プラットフォーム「Google Antigravity」の中核エンジンとしても機能する。AIが自律的にタスクを計画・実行する「エージェント型」アプリケーションの開発基盤となる。

タイ企業への影響

タイではAI導入が進む一方、コストと人材不足が課題となっている。AWSの調査によると、タイ企業の32%がAIを導入済みだが、72%が表面的な活用に留まっている。8万人のAI専門家が不足しているという試算もある。

Gemini 3 Flashの低コスト化は、こうした状況を改善する可能性がある。従来は高額だった高性能AIへのアクセスが容易になり、中小企業でも本格的なAI活用を検討できる環境が整いつつある。

BKK IT Newsとしては、コスト面での障壁が下がることで、タイにおけるAI活用の裾野が広がると見ている。ただし、導入後の運用体制や人材育成は引き続き重要な課題だ。

今後の展望

Gemini 3 Flashの登場により、AI市場における価格競争はさらに激化すると見られる。OpenAIやAnthropicも対抗措置を講じる可能性が高い。

企業にとっては、複数のAIモデルを比較検討する機会が広がる。タスクの性質に応じて最適なモデルを選択する「マルチモデル戦略」が現実的な選択肢となってきた。GoogleのVertex AIでは、複雑な推論が必要な場合はGemini 3 Proを、高速処理が必要な場合はFlashを自動的に選択する機能も提供されている。

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