Google AIブラウザ「Disco」登場 ~GenTabsが示すブラウジング体験の転換点~

Google AIブラウザ「Disco」登場 ~GenTabsが示すブラウジング体験の転換点~ AI
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2025年12月11日、GoogleがAI搭載の実験的ブラウザ「Disco」を発表した。Webページを閲覧する道具から、タスクを解決する道具へ。ブラウザの役割が変わろうとしている。

Discoとは何か

Discoは、Google LabsがChromeチームと共同で開発したAIブラウザだ。最新のGemini 3を搭載し、現在はmacOSユーザー向けにウェイティングリスト方式で提供されている。

最大の特徴は「GenTabs(Generated Tabs)」という機能だ。通常のタブがWebページを表示するのに対し、GenTabsはユーザーのタスクに応じてアプリを自動生成する。例えば、複数の旅行サイトを開いて比較している場合、Discoはその意図を読み取り、価格・場所・レビューを統合した旅行計画アプリを生成する。

GenTabsの動作は3段階に分かれる。まずGemini 3が開いているタブの内容を解析し、ユーザーの意図を特定する。次にHTML、CSS、JavaScriptを動的に生成し、タスク専用のミニアプリを構築する。最後に複数のWebサイトから情報を抽出し、生成したアプリ内で統合表示する。

競合との比較

2025年はAIブラウザの競争が激化した年だ。10月にはOpenAIが「ChatGPT Atlas」を発表した。7月にはPerplexityが「Comet」をリリースしている。

Atlasは既存のWebサイトを見ながらAIが操作を代行する「アシスタント型」だ。予約や購入をユーザーの代わりに実行する。Cometは検索結果を統合・要約し、元のWebサイトへの訪問を最小限にする「検索エンジン型」だ。

これに対しDiscoは「ビルダー型」と言える。既存のWebサイトを素材として扱い、新しいツールを作る。アプローチが根本的に異なる。

Googleの戦略

Googleがなぜ別ブランドのDiscoを立ち上げたのか。その理由は明確だ。

Chromeは数十億人が使う基盤インフラだ。大胆な変更は既存のユーザーとエコシステムにリスクをもたらす。Discoという実験場を用意することで、新しい機能を安全にテストできる。ユーザーの反応が良ければ、将来的にChromeへ統合する可能性がある。

Discoのコンセプトは、Googleの過去の実験と深く関連している。2009年のGoogle Waveはリアルタイム共同編集を導入したが、複雑すぎて普及しなかった。2014年のInbox by Gmailはメールを「タスク」として扱い、関連するメールを自動的にまとめた。Discoはこれらの思想を引き継ぎ、ブラウザに適用している。

パブリッシャーへの影響

懸念されるのは、Webコンテンツを作るパブリッシャーへの経済的影響だ。

従来の検索ではAI概要表示がクリック率を下げる「ゼロクリック」問題が議論されていた。GenTabsはさらに踏み込み、ユーザーが元のWebサイトを訪問する必要性を排除する「ゼロビジット」を引き起こす可能性がある。生成されたアプリ内で作業が完結すれば、情報の元となったWebサイトを訪れる理由はない。

多くのWebメディアは広告表示やアフィリエイト収入に依存している。訪問者が減れば収益も減る。コンテンツ制作者が撤退すれば、Web上の質の高い情報が減少する。

プライバシーとセキュリティ

Discoが機能するには、ユーザーの深いレベルのデータが必要だ。GenTabsは開いているすべてのタブの内容を常時解析する。これは従来の閲覧履歴を超えた、ユーザーの「思考の文脈」をGoogleが掌握することを意味する。

また、Webサイト側に悪意ある隠しテキストが含まれていた場合、GenTabsがそれを読み込むリスクもある。AIが生成したアプリが誤った情報を表示した場合、責任の所在が曖昧になる。

今後の展望

BKK IT Newsとしては、DiscoがChromeに統合されるまでには時間がかかると考えている。Googleは検索広告モデルとの調整が必要だ。GenTabsによる「ゼロビジット」が拡大すれば、広告表示の機会が減少する。

企業としては以下の点に注意が必要だ。まず、AIが読み取りやすい形式でデータを提供すること。次に、AIが単純に要約できない独自性のある情報発信を強化すること。最後に、AIブラウザが社内で使われる際のデータ取り扱いルールを明確にしておくこと。

Discoは実験段階だが、ブラウザの未来を示す重要なシグナルだ。この方向性を理解し、準備を始めることが求められている。

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