バンコク、2025年デジタルノマド都市ランキングで世界1位を獲得

2025年デジタルノマド都市世界1位はバンコク ノマド
ノマド

バンコクが2025年のデジタルノマドにとって世界最高の都市として選ばれました。

この評価は複数の独立した調査機関によって裏付けられています。バンコクの成功には、従来からの魅力に加えて、タイ政府による戦略的なビザ政策が大きく貢献しています。

複数のランキングで首位を獲得

バンコクの第1位という評価は単一の調査結果ではありません。QR Code Generator社とHotelWithTub.comという少なくとも2つの独立した調査機関が、バンコクを最高の都市として評価しています。

QR Code Generatorのインデックスでは、バンコクは100点満点中69.98点を獲得しました。評価基準は高速インターネット、手頃な生活費、リモートワークビザの利用しやすさという3つの柱で構成されています。

HotelWithTub.comの調査はより包括的で、バンコクに91点という高い評価を与えています。世界1,300以上の都市を対象とした調査では、ノマドによる満足度が5点満点中4.55点という極めて高い評価でした。単身者の生活費は月額約1,537米ドルと、他の主要都市と比較して競争力が高い水準です。

興味深いことに、タイ国内の地方都市であるナコーンラーチャシーマーが5位にランクインしています。これはタイという国全体が持つポテンシャルの高さを示すものです。

タイ政府の積極的な政策支援

バンコクの成功を決定づけたのは、2024年に導入されたデスティネーション・タイランド・ビザ(DTV)です。このビザは、デジタルノマド市場に対する画期的な政策として機能しています。

DTVは5年間のマルチプルエントリービザで、1回の入国につき180日間の滞在が可能です。さらに1回180日間の延長が認められるため、実質的に約1年間の連続滞在が可能となります。

財政証明として50万タイバーツ(約15,000米ドル)の預金残高が必要ですが、高額な年収要件はありません。この点が他のビザとの大きな違いです。

タイには他にも長期滞在(LTR)ビザやスマート(SMART)ビザなどが存在します。LTRビザは年間所得8万米ドル以上という高いハードルが設定されており、富裕層や高度専門職をターゲットとしています。SMARTビザはタイが戦略的に育成を目指す産業の専門家向けで、一般的なデジタルノマドは対象外です。

DTVの登場により、年間所得ではなく預金残高を基準とすることで、より広範なリモートワーカー層が長期滞在できるようになりました。これまで法的にグレーなビザラン(短期滞在を繰り返す行為)に頼らざるを得なかった多くのデジタルノマドにとって、合法的かつ安定的な長期滞在への扉が開かれたのです。

経済への影響と課題

デジタルノマドがもたらす経済効果は、短期滞在の観光客とは質的に異なります。彼らは平均して6ヶ月以上滞在し、年間を通じて安定した消費を行います。タイ観光庁のデータによれば、月間支出額は約64,000バーツ(約1,800米ドル)に上ると推定されています。

消費は不動産、飲食業、地域サービス業など広範な分野に及びます。長期賃貸アパートメント、コワーキングスペース、フィットネス施設などの需要が増加し、地域経済を活性化させる効果が期待できます。

しかし、課題も存在します。外国人リモートワーカーの流入により、不動産価格の上昇圧力が高まっています。バンコク中心部の不動産価格は過去10年で既に2倍から3倍に高騰しており、高級物件セグメントは今後も年3~7%の価格上昇が見込まれています。

メキシコシティやリスボンなどの先行事例では、デジタルノマドの流入が家賃の急騰を招きました。地元の長期賃借人よりも高収益なAirbnbなどの短期賃貸を優先する家主が増え、地域住民が住み慣れた地域から追い出される事態が発生しています。

バンコクでも、一部の地域で高級カフェが増え、地元住民には手が届かなくなったという声が上がっています。これはジェントリフィケーション(高級化による地域変容)の初期指標です。

企業が取るべき対応

企業にとって、デジタルノマドの増加は新たなビジネス機会を意味します。長期賃貸物件の供給、コワーキングスペースの運営、地域サービスの提供など、多様な展開が考えられます。

一方で、持続可能な成長のためには慎重な対応も必要です。BKK IT Newsは、地理的な分散が一つの選択肢になると考えています。バンコクへの集中を緩和し、チェンマイやプーケット、ナコーンラーチャシーマーなどの地方都市への誘導を進めることで、バンコクのインフラや住宅市場への過度な圧力を緩和できる可能性があります。

また、DTV保持者の銀行口座開設問題も現実の課題として報告されています。多くの銀行がマネーロンダリング対策などを理由にDTV保持者を短期観光客として扱い、口座開設を拒否または躊躇しています。長期滞在者にとって、銀行口座が開設できないことは生活上の大きな障壁となります。

今後の展望

バンコクの世界第1位という評価は、タイにとって大きな成果です。しかし、この成功を持続可能なものにするためには、経済的利益と社会的影響のバランスを取ることが必要になります。

不動産市場への介入、地方都市への分散促進、ビザ政策と金融機関の連携強化など、複数の施策を組み合わせた対応が求められます。デジタルノマドと地域社会との真の統合を促進するプログラムも、今後重要になってくるでしょう。

タイが東南アジアのデジタルハブとしての地位を確立し、その恩恵を社会全体に広く共有していくためには、単にノマドを惹きつけるだけでなく、その影響を賢明に管理することが必要です。

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